A-3. ビブラート

ビブラートをかけずに音を長くキープするのは難しい

ビブラートとは?

音を長く保とうとするときに小刻みに音を揺らします。

この”音の揺れ”のことを指します。

ポップスやロック、ソウル系のシンガー達はしばしばこのビブラートをかけることを嫌がる方もいらっしゃいます

どうしてでしょうか?

オペラ歌手や演歌歌手がゆっくり大きくビブラートをかけて歌っているイメージがあるのか、クラシック寄りで、わざとらしい”濃い歌”になるのを好まないからでしょう。

理想的なビブラートは毎秒6回前後などといわれていますが、ただビブラートというのはかけ方もいろいろです。

実際には音楽のジャンルや音域、音量によっても変わり、曲のテンポや伸ばす音の長さに合わせて調節されることが多いです。

クラシックなどではビブラートを入れっぱなしで音をキープすることが多いですし、演歌などでは、ややゆっくりとした振れ幅が広いビブラートが主流でしょう。

ポップスやロックなどではまっすぐ音をキープした後に、語尾(音を切る最後)で揺れ幅が小さいやや早めのビブラートを入れたりします。

このようにスタイルによってビブラートのかけ方も様々です。

ただ同じ音を長くキープするときに、ビブラートを入れるのは理にかなった根拠があるのですね。

ビブラート無しに音を長くキープするのは難しい

ビブラートをかけずに同じ音を長く伸ばす(キープ)ことは、実はとても難しいものだと感じています。

これは私がボーカルディレクションをしている経験からも明らかで、以下のような傾向になりがちですね。

同じ音をまっすぐキープしていると、どうしても後半につれて、音がフラット(低くなる)してしまう。

特に高い音などに顕著ですが、一定の音を長く保とうとすると、体のどこかに変な力みが生じてしまい声帯周りの喉を絞めてしまう。

結果、音がフラットしてしまう。

素晴らしいボーカリストは長い音を歌う場合に小刻みに音を揺らします。

これは録音した歌の波形を見ても明らかです。

ビブラートは声帯がリラックスしていないと綺麗にかからない

あごを揺らしながらビブラートをかけるボーカリストを時折見かけますが、実はこれはあまり正しいことではありません。

これではあご周りの筋肉に必要以上の力が入ってしまい、声帯に余計な緊張が生じてしまうからです。

ビブラートは声帯が十分にリラックスしている状態でないと、うまくかけられないものです。

発声の基本は発声に関係する筋肉(喉や首など)を緊張させないことです。

ボイストレーニングで腹式呼吸を学ぶのは、お腹周りの筋肉を使うことで、発声に関係する喉や首などの筋肉をリラックさせた状態で肺へのスムーズな息の出し入れを行うためです。これによって綺麗な発声がしやすくなります。

逆に、 ビブラートを練習する過程で、無駄な力を抜くことも学ぶことが出来ます。

したがって発声テクニック向上のためにもとても役立ちます。

ビブラートは発声テクニック、ボーカリストの個性、リスナーの印象、全てに貢献

このようにビブラートを思うままにコントロール出来るようになるということは、体に余計な力が入っていないという証で、正しい発声テクニックが身についているということを意味します。

またボーカリストによってビブラートのかけ方はそれぞれです。

ビブラートを始める位置
スピートの早い遅い
波の浅い深い

ビブラートの最後に息を混ぜたり

などして、ニュアンスを入れる場合もあります。

そしてこれらがボーカリストの個性にもなってきます。

それからビブラートは聞き手にも比較的分かりやすいボーカルテクニックのひとつで、上手いボーカリストとそうでないボーカリストを判断する材料になるものだと感じます。

つまりリスナーは、≪ビブラートを綺麗にかけている = 上手いボーカリスト≫という印象を抱くでしょう。

最後になりますが、ビブラートは音が伝わる性質からも、理にかなっていると言われています。

音は波として空気などの物質の中を伝わります。

つまり音というものは空気を振動しながら伝わる性質があるからです。

したがって、音を揺らさずに同じ音を長くキープするのは、自然の摂理から言っても反しているともいうことになります。

皆さんもボイストレーニングでビブラートを自在に操る術を身につけて下さい。

いろんな意味で歌の幅が広がると思います。