B-6. 歌う上での心得



良い歌は細部に宿る

あなたは1音1音に集中できていますか?

皆さんも歌う時にはもちろん、音程やリズム、ニュアンスなど十分に気をつけていると思います。

ただ、実際には「何とはなしに流して歌ってしまっている方が非常に多い」というのが、私の見解です。

例えば

・語尾をきちんと伸ばしきっておらず(歌いきっていない)、音程をキープできずに下がってしまう

・音の上がるところ、下がるところをしっかり意識出来ていない

・しゃくりが上がりきっていない(音程が上がりきらない

など、メロディーを曖昧に捉えており、1音1音への執着心が足りない歌になっているんですね。

音符の1つ1つを大事に歌っていないのです。

本来であれば歌唱テクニックも高く、音感も良いはずの方でも、このような理由で歌が悪くなってしまうケースを、私はたくさん見てきました。

聞いている立場からすると、このような歌は何とも地に足のついていない不安定で説得力のない歌に聞こえてしまいます。

歌う上での意識を変えてみる。細部にわたり意識が薄いこと気づくことが大切

また問題なのは、意識が足りていないことに本人が気づいていないということです。

というより自分一人では気づきずらいといった方が良いかも知れません。

何故なら、本人は十分に丁寧に歌っているつもりだからです。

しかし「歌の現状を自覚する」ことが出来なければ、いくら発声練習をして、歌の実践トレーニングを繰り返してもなかなか上達は望めません。

これでは困りますよね。

ではどうすればいいのか?

第3者に自分の歌を客観的に聴いてもらい、助言してもらう

ことが効果的です。

意識が希薄になっていることを指摘してもらうことにより、本人が「細部にもっと集中する」ということを意識し始めると、歌が格段に良くなって行くことが多々あります。

例えば、当校ワンズウィルの体験レッスンでは、歌をレコーディングして、自分の歌を何度も聴いてもらうようにしています。

これは「歌の現状を認識」して頂く目的もあります。

最初は自分の問題点を理解できなくても、講師がこと細かに解説していくうちに「意識が足りていないこと、もっと1音1音を大事に歌う必要があること」に気づき始めるんですね。

すると、特に音程や語尾の安定感が向上していきます。

今まで気づかなかったことに、意識を向けるだけで変化が生まれます。

良い歌は細かいことの積み重ねでできている

良いボーカリストというものは、細部にわたり丁寧にしっかり気持ちを込めて歌います。

例えば、山下達郎さんや小田和正さんの歌を聞いて頂ければ分かりますが、一言一言をとても大切に、細かいところまで神経を研ぎ澄ませ歌っているのに気づくと思います。

「神は細部に宿る」をもじって「良い歌は細部に宿る」ではありませんが、

素晴らしい歌は、細かいことの積み重ねでできています。

歌が上手い人とそうでない人の差は、こんなところから生まれます。

但し、勘違いして頂きたくないのは、細部にわたって丁寧に歌うと言っても合わせにいってはいけません。

音程を合わせに行くと弊害もある」でも書きましたが、音符通りに正確に歌おうとして慎重になりすぎると、「こぢんまりとした堅苦しい歌」になり、歌のダイナミックスさが欠けてしまいます。

聞いている立場からすると、これではニュアンスのない面白味のない歌に感じてしまいます。

気持を込めて大胆に、そして繊細に歌うことが大切です。

さらっと流して歌わない、1音1音に気を抜かずに、気持をのせて歌うことです。

良い歌は細部に宿る歌は細かいことの積み重ねでできている」ということを、まずは頭においてみてください。

その意識を持つだけで、あなたの歌は今までと変わってくるでしょう。

歌うことだけに集中する大切さ

無意識な筋肉の連携運動によって良い声が生まれる

発声には腹(最下腹部、下腹部、みぞおち、横隔膜、脇腹など)、背筋、咽喉、口腔、顔面など、いくつもの細かい筋肉が関わっていますが、それら全てが適切な運動をしてこそ、美しい声が生まれます。

しかもこれらの筋肉を無意識に動かすことが大切になってきます。

例えば歌っている時に、カツゼツを良くしよう、響きのある声を出そうと、口の開け方や、舌の使い方・体の使い方などを意識しすぎると、余計な力が加わり、体は徐々に硬くなり、かえって発声に関わる筋肉のスムーズな連携運動が出来なくなります。

「雑念」ともいうべき意識がかえって発声を悪くする(筋肉の連携運動を阻害する)ばかりか、歌の表現までにも悪影響を及ぼします。

歌は人(リスナー)にどう伝わるかが最も大切です。

ボイストレーニングで学んだ発声法などのテクニックに走ってしまい、伝える気持を忘れてしまう。

初心者だけでなく、特にボイトレで発声をマスターしている上級者の方に多く見られる現象です。

ここの高音を柔らかく綺麗に響かせたい

子音を上手く発音して跳ねた感じを出したい

ビブラートを上手くかけたい

ボーカリストは細かなテクニックを駆使したいものですよね。

当然良い歌には重要な要素です。

しかしこれを声帯がリラックスした状態で無意識に表現できればいいのですが、

上手く歌おう・美しい声をだそう】という意識(雑念)が邪魔をし、体の余計なところに力みが生じて、結果、面白みのない堅苦しい歌になってしまう方が非常に多いような気がします。

これでは意味がありませんよね。

歌っている側からすれば、自分の自慢の声を存分に発揮しているつもりなのですが、実は聞いている立場からすると押し付けがましく感じたりするものです。

ボイストレーニングで身に付ける発声法は、歌を表現するための手段。

【発声が良い、綺麗な声が出せる】のと、【良い歌を歌える】というのは別の話だと考えております。

歌は【綺麗で響きのある声、声量がある、音程がいい、発音がハッキリしている、高音が美しい】だけでは人に感動を与えることはできません。

少々音程が悪くても、声がかすれていても、【人に伝わるグッとくる歌】を歌うボーカリストはたくさんいます。

ボイストレーニングなどで身に付ける発声法は、あくまでも歌を表現するためのひとつの手段にすぎません。

発声やテクニックは無意識に出来るようになるまでトレーニングを積む

ボイストレーニングで身に付けた発声(筋肉の使い方など) を、歌う上で意識的にやらないと出来ないようであれば、それは自分のものになっていないということでしょう。

歌う時は「発声を意識しているようで意識していない」感覚で、声をコントロール出来ることが理想だと思います。

簡単なことではありませんが、そのためには発声の基礎トレーニングを積み重ねいくことで成し得ることなのだと思います。

そして最後には心をこめて歌うことが何より大切になってくるのだと考えております。

皆さんも、歌う時には余計な雑念は消して、心の底から歌うことだけに集中してみてください。

基礎トレーニングをしっかり行っている方であれば、自然と素晴らしい声で歌を表現出来ると思います。

ボーカリストとして心掛けたいこと

音程を気にする前に

歌う曲の音符(メロディー)がキチンと頭に入っていますか?

ということです。

自分ではメロディーをきちんと理解しているつもりでいても、うやむやに頭にインプットされていることは往々にしてあることなんですね。

正しいと思って歌っていても、実際には間違った音符(メロディー)で覚えてしまっていて、結果として音程が悪くなってしまう。この様なケースは非常に多いように思います。

≪メロディー譜≫で音符の動きを事前に確認して、それをイメージしながら歌うことで、音程が良くなるばかりか、ピッチを合わせようという心理から解放されて、歌のニュアンスや表情も付けやすくなります。

上を目指すボーカリストの志

≪メロディー譜≫を見ながら練習するのは、ボーカリストとして当たり前の様な気もしますが、いがいとそれを実践されている方は少ないような気もします。

上のレベルを目指すのであれば、音程が良いのは当たり前の話です。

そのためには普段から≪メロディー譜≫を見ながら練習することで、音符の動きなどは完全に頭に入っていなければなりません。

メロディーの動きを体にしみ込ませ、音程などは気にせずともピッタリ歌え、ニュアンスや表情をつけることに気持ちを向ける。

そして、内なる自分の感情を歌に表現する。

ボーカリストとしてはとても大切な心掛けで、上を目指す方であれば是非やって頂きたいことです。

また自分の歌を把握するためにも、ただ歌うのでなく、トレーニングした歌を録音して確認することもとても大切になってきます。

これは私達の経験から言えることなのですが、ボイストレーニングで発声練習を繰り返し、発声の基本が身に付いただけでは、それを実際の歌に生かしてくのは難しいんですね。

いくら綺麗な発声が出来ても、良い歌かどうかは別の問題です。

そのためにも、キチンと自分の歌を録音して、客観的に歌がどうなっているか?把握する必要があります。

今は自宅で歌を録音するソフトや機材もかなり手ごろな価格で入手できるようになりました。

ですからボーカリストにこそ、自宅で歌を録音する機材は持っていて欲しいと思っています。

パソコンさえ持っていれば、Mboxファミリーとマイクを合わせて購入しても、わずか¥33,000 で歌を録音するための機材は用意できます。

もし歌いたい曲のメロディー譜が入手できなかったとしても、DAWソフトを持っていれば自分でメロディーを耳コピして、midiで打ち込んだり鍵盤で弾くなどして、音符の動きをmidi画面で見れたり、音で確認することも可能になります。

譜面を作ることも出来ます。

少なくとも、私の周りにいるプロ予備軍のボーカリスト達は、自宅でこの様なDAWやインターフェイスを持っている方がほとんどです。

このようにもう一つ上のレベルを目指すのであれば、

・メロディー譜を見ながら練習し、音符の動きは完璧に頭に入れる

・自分の声や歌を確認する意味でも、歌を録音しながらトレーニングする

ボーカリストの心構えとして最低限実践して頂きたいことです。

メロディー譜を事前に確認し、音符の動きをイメージして歌う

メロディー譜でキチンと音を確認する大切さ

歌録りをしていると、「なぜかこの音だけは毎回音程が低くなってしまうなー」ということがよくあります。

それを本人に確認すると、本来の音より半音低い音を正しい音と、勘違いして歌っていたりするんですね。

自分ではメロディーをきちんと理解しているつもりでいても、半音ずつ上がったり下がったりしているようなところは、うやむやに頭にインプットされている事は良くある事だと思います。

先日、Stacey Kentという女性Jazzシンガーの歌を聞いていて、メロディーの細かい動きを完璧に把握してるんだろうなーと感じました。

小刻みにテンポよく展開する複雑なメロディーの曲を、とてもスムーズに小気味よく歌っていたんですね。

音程も素晴らしいのですが、キッチリしすぎずとてもナチュラルでスムーズなんですね。

音程がピッタリ合いすぎていると案外窮屈に感じたりするものです。

メロディーの細かい動きを完璧に把握して、しっかりイメージ出来ているからこその歌なんだなと想像できます。

皆さんも歌を練習する時は

・メロディー譜を入手し、音符の下に歌詞を書きこんで、それを見ながら練習する

・もしメロ譜がない場合は、鍵盤でメロディーをなぞって確認する

などをしてみてください。

メロディーの正しい動きをしっかり把握した上で歌うと、音程が良くなるだけでなく、歌が生き生きしてくると思います。