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インクジェット・プリンター

 個人用のインクジェット・プリンターについて、私の経験から、取り扱い知識を掲載します。

機種は、キャノン製「PIXUS iP4500」を主体に説明します。

この機種は製造終了品種ですが、 他の機種にも準用できますので、トラブル防止に役立てるために、ご活用してください。

 私が使用中の機種は、キャノン iP7230 です。









1.概要

インクジェットプリンターは、機構が単純であるという特長をもつので、個人用途の殆どが該当します。

メーカーが数社あって、それぞれに特徴がありますが、私は、キャノン製を使い続けていますので、 キャノンの普及型カラー機種について、説明します。

複合機は、スキャナー機能が付加されているもので、構造が複雑で、高価格となります。

インク滴の放出原理から、サーマル方式ピエゾ方式の2方式がある。

キャノン製とヒューレット・パッカー製はサーマル方式で、ノズル手前でインクを 誘導加熱して、沸騰による気泡の圧力でインク滴を放出する。









エプソン製とブラザー製はピエゾ方式で、ピエゾ素子に直流高電圧を印加して、 素子の変形による圧力でインク滴を放出する。









2.サーマル方式とピエゾ方式の比較

長所

サーマル方式では、ヘッドの構造を単純に出来る。

また、加熱でインクの流動性が高い。

ピエゾ方式では、インクの噴出量や液滴サイズを制御しやすい。

また、幅広いインクに対応できる。

短所

サーマル方式では、加熱によるインクの劣化を生じやすい。

また、インクの噴出口が多くなり、クリーニングによるインクのロスが多くなる。

また、水溶性インクに限定される。

ピエゾ方式では、インクに気泡が混入すると、目詰まりしやすい。

また、ヘッドの構造が複雑になる。

3.インクについて

インクジェットプリンターのインクは、熱安定性、微細な形状の保持、安全性など多くの性能が同時に求められます。

色の特性として、発色の美しさ、インク濃度の高さ、色あせしにくいという点も重要になります。

使用される水性インクには、染料系インクと顔料系インクがあります。

染料系インク

染料は被印字媒体に対して色素を染み込ませて色をつけるので、写真との相性がよい。

初期のインクジェットプリンターから採用され、現在でも広く普及している。

染料系インクの長所は、色再現性が高いこと、光沢が出やすいこと。

短所は、耐水性が低い こと( 水に濡らすと、にじみが生じやすい)。

また、耐光性が低い こと( 太陽光などが長時間当たると、色あせ(退色)を起こしやすい)。

顔料系インク

顔料は、顔料素材の粒子であり、インクの色素が被印字媒体表面に固着して色をつける。

顔料系インクの長所は、耐水性が高いこと、耐光性が高いこと。

短所は、耐摩擦性が低いこと( 顔料粒子が紙内部に浸透しないため印刷面をこすると色落ちしやすい)。

また、溶液としての安定性が悪い。

更に、粒子であるため比較的ノズルの目詰まりを起こしやすい。

また、光沢が出にくい。



4.メーカー純正インクと一般の市販インクについて

純正品の価格が高いので、市販の非純正品を使用されますが、あくまでも自己責任です。

汎用の機種では、非純正品の種類も多くて、価格の差も大きいようです。

しかし、インクの品質やインクタンクの加工精度が悪いものもあるので、トラブルも起きやすく、インクの消耗量も多いようです。

また、ノズルの目詰り対策で、界面活性剤の洗浄液やアルコール系溶剤を使用されるケースもありますが、これらも、メーカーは推奨しておりません。

溶剤等によって、インクの洗浄はできますが、光センサーを劣化させたり、基板を傷める危険があります。

使用頻度の低い方には、機器を長く持たせるためにも純正品の使用をお勧めします。

本体価格を低く抑えた普及機種では、純正品インクタンクを購入されることを想定して、価格設定されています。

5.用紙の選定とプリンターの設定

インクジェットプリンターにとって被印字媒体となるのは主として紙であるが、特に主流である染料系インクを普通紙に使用した場合、にじみが発生する。

またインクが裏側まで染み抜けてしまう、裏抜けという現象が発生する場合もある。

このため、インクジェットプリンターメーカーなどでは高品質な印刷結果を得るためにいわゆる専用紙(インクジェットプリンタ用紙)と呼ばれるものを開発している。

専用紙にはコート紙、光沢紙などが使われる。

湿った紙、破れた紙、薄すぎる紙、表面がつるつるした紙、和紙などは、使用しないほうが良い。

紙詰まりを生じやすいし、紙送りが不規則となって、正確に印刷できません。

プリンターの設定で、注意すべきことを列挙します。

1.用紙の種類やサイズを変更したら、その都度、設定を変更します。

2.まず先に、印刷プレビュー画面で、確認します。

3.面積広く彩色された原稿や画像では、インクの使用量を減らすことを検討します。

4.不要なページを印刷しないように、ページを指定して印刷します。

5.写真は、ファイン・モードに設定し、普通用紙で試し刷りして、確認します。

6.トラブルを生じて、印刷が中止となった場合は、プロパティ画面から仕掛中のタスクを取り消します。

6.主な故障と修理費用

基本的に、メンテナンス・フリーで設計されています。

しかし、精密機械であり、進歩も早いので、長期間の使用には耐えません。

メーカーでは、製造終了後5年をめどに、部品交換や修理受付サービスを中止します。

また、純正インク以外のインクを使用して故障の原因になった場合には、保証の対象になりません。

また、素人が分解した故障機は、修理受付を拒否される場合があります。

従って、購入後1年間の保証期間では、必ず、純正インクを使用してください。

寿命は、使用状態、環境(ほこり、汚染空気、湿度)、使用頻度等によって異なります。

概略で、3年から10年の範囲でしょうか。

製造終了した普及機種では、買い換えたほうが得策です。

以下に、主な故障を列挙します。

A.紙詰まりで、紙片が取り出せなくて、電源が入らない。 

裏蓋を外して詰まった用紙を取り出しますが、残ったら紙をちぎってでもしなければ取り出せない場合があります。

本体を分解すれば取り出せますが、特殊ねじが使われており、素人では分解出来ません。

B.気がついたら、電源が入らない状態となった。  

この故障が多く発生します。   

センサーが多数使われていて、条件が整わないと、起動出来ません。   

プリンターのドライバー・ソフトを入れ直しても復旧出来ない場合はお手上げです。

C.印刷品質が劣化した。   

ノズルの目詰りです。   

ノズルの保守画面で、クリーニングを実施します。   

インクの乾燥・固着がひどい場合には回復出来ません。   

予防策は、最低月に1回はテスト印刷を実行してください。   

但し、頻繁にクリーニングを実施するとインクの無駄となります。

D.使用方法が不適切で、動作不良等を生じた。  

紙の排出やインクタンクの交換時に、無理に大きな力をかけると、器械が壊れます。   

必ず、電源を切ってから、トラブルに対処します。   

また、電源の入り切りは、本体の電源スイッチで操作してください。   

長時間の使用停止時は、カバーを閉じて、異物が混入しないように気をつけましょう。   

水をこぼしたら、しばらく天日干しします。

7.構造と機能

キヤノン独自のバブルジェット方式では、ヒーターによってノズル内に気泡(バブル)を発生します。

この圧力で微細なインク滴を吐出し、紙に吹き付けてプリントします。

インクの用紙への吐出はキャリッジに載ったプリントヘッドが担い、用紙の動く方向と直角方向にヘッドが動き、プリントします。

高精細なプリントには、ヘッドをナノ単位で制御して、正確な用紙搬送が必要であり、高度な精密技術が要求されます。

以下に、私の故障機の写真を例に、構造を説明します。









ノズル部の詳細は上図の如くで、多数の噴出口があって、順次インク滴を放出する構造です。

ヒーターの加熱時間分の遅れを多数のノズルで補っています。

標準印刷では2pl ノズルを、ファイン印刷では1pl ノズルを、高速印刷では5pl ノズルを使用します。

この図は、カラー部のノズル説明図ですが、顔料系インクインクは使用出来ません。

他方、下の写真にあるモノカラー用のノズルは噴出口が大きいので、顔料系インクも使用出来ます。









上図で、ノズル部の右側がカラー用ノズルで、左側がモノカラー(黒白)用ノズルです。

データ信号の受け口の奥に、基板があり、信号処理とノズルの制御をします。









休止中は、プリンターヘッドをこの位置に収納します。

ノズル部の乾燥を防ぐとともに、起動時にヘッドのクリーニングを行います。

クリーニング時は、インクパッド・ユニットが下がり、ノズル部との隙間をゴム製の板片で掃引して、清掃します。

この機能から推察されることで、すべてのノズルからインクが放出されます。

従って、ノズルの多い機種では、実際には利用していないインクでもかなりの消費量となります。























右寄りにスポンジ・ゴム製の用紙取り込みローラーがあります。

これは、ハガキにも対応できるように考慮されています。

しかし、A4ペーパーの薄紙では、紙送りが偏ったり紙詰まりを生じやすくなります。
















この電源ユニットはプラスティック製ボックスに入っています。

AC100V側に電源ノイズ・リミッター回路があります。

ガラス管ヒューズは無く、ブレーカーで過電流遮断して、冷却後に自動復帰します。

出力は、左から青ー黒で10V、赤ー黒で5V、黄色は電源制御信号線です。

電源制御回路は、裏面にICがあります。









この基板でノズル部の噴射を制御します。

ノズルの位置関係を計算して、複雑な制御になります。









もし、インクタンクを間違って装填すると、このセンサーで感知します。

また、インクタンクを正しく装填しないと警告表示が出ます。
























ゴム製の丸い凸部がインクタンクのスポンジ部のキャップとなって、休止時のインク漏出を防止します。

非純正品のインクタンクでは、加工精度が悪く、ここでインクが漏出します。









非純正品のインクタンクを使ったり、長期の使用では、インク・アッセンブリーの付近が汚れています。

平常時は、この部分が見えませんので気が付きません。
















漏れたインクやクリーニングによるインクがインクパッド・ユニットからポンプで排出されて、 排出口チューブより放出されます。

この廃インクが底部の廃インク吸収シートに落下します。









DC10V のパルス・モーターと一体に固定された目盛りシートを光センサーで読み取って、 位置検出します。

これは、横方向の制御用です。









隠れていて見えませんが、縦方向の位置制御では、目盛りした透明なテープを、 タイミングベルトと平行に展張しています。

これを光センサーで読み取っています。

以上